[ふと目を覚ますと自分が寝ていた事に気付く。意識がある時にみたメルセデスの姿が今は無いのを知り、少し申し訳なく思っているようだ]

あとで謝らなければいけないな。
…しかし羊飼いの朝は早い。また夜に会った時で大丈夫だろうか？

[食べ終わった食器を丁寧に片付けながら、彼は自分の胸元を見た]

[パタパタと雨具の水気を払って集会所のドアを潜ると、今度はフードを取って頭を軽く振る]

ぷは。
霧雨って濡れるんですよね…。
こんな日に告解しに来なくても良かったのに、とは思うものの…今更ですか。

[来ていた外套を入り口の邪魔にならないところにかけ、食堂へ向かおうとして、むぎゅぅ]

[そして首から提げる光る棒に目を向ける。
それぞれ長さの違う棒が12本。
まるで横笛のようにキレイに並んでいるが、彼が集会所に訪れるたびに光りを帯びる本数が変わっている。
……どうやらそれが、彼の時を刻む時計らしい。

左胸から右胸にかけて長くなるその棒は、今は左側5本と6本目が、他の5本と比べてかなり薄く光を帯びているようだった。
きっと1時間ごとに棒が全部光っていくのだろう。
昼の12時をさす頃には棒は全て光っているに違いない]

……？
　

はっ、ドロテアさん。ドロテアさんいますかー。

こんな所で幼女…じゃなくて少女が寝ています。
何かに踏まれた後があるみたいですが一体どうしたのでしょうね。

お部屋を用意してあげてください。

[ドロテアが部屋へ案内してくれるならば、何事もなかったかのように少女を抱き上げて布団に寝かせるだろう]

あ、アルベリヒさん。
おはようございます。

アルベリヒさんもお仕事の時間が朝早いのですねぇ…。

[ドアの音の開く音を聞き、ふと目をやればそこに神父を発見する]

……お帰り、か？　いつもご苦労様だ。
それと……どうやら話の途中で眠っていたようで、申し訳なかった。　気分を害してはいないだろうか。

[申し訳なさそうに目を伏せる。元々表情が見えないほどに深く被った帽子がさらに目深にかぶられているように思えた]

[少女を抱えながら、にっこり]

はい、ただいまです。
あ、昨日ですか？　大丈夫ですよ。
僕もよくやりますし。
寝ているのに気づけたら毛布をかけるなり部屋に連れていくなりできたのですが…。

[きらきら光ってる胸元に「時計かな…？」とうっすら考え]

[神父の言葉に少し緊張がとけたのだろうか、めったに口角の上がらぬ唇が、少し笑っているように見えた]

いや、連れて行ってもらうには及ばない。
そこまで迷惑をかけてしまうのも申し訳ないし、何より悪い環境の中で睡眠を取ることには慣れている。だから気にしなくていい。

そういえば、うっすらと記憶にあるのだが…コレについて聞いていただろうか？
[首から提げた棒を二つほどつまんで神父に向けた]

ええ、そうです。そうです。
見たことないのですけど、時計ですか？
今６本光ってて……？

それを着けてると、
真っ暗な中でもアルベリヒさんはすぐ見つけられそうですね。
[軽く吹き出しながら]

[笑われて少し不思議そうにしたが、コクリと頷き]

そうだ。これは時計だ。
他のように細かい時間が分かるわけではないが、俺にはこれで十分事足りている。
どうも普段見る時計はせわしない感じがして落ち着かない。
俺が落ち着かないでいると羊達に悪い影響を与える。
…そう考えるとやはりコレが一番良かったのだと思う。

確かに、この明かりを目印に羊達が俺の所に来てくれる。
きっと目印にはぴったりだろう。
[口元に手を当てて考えている様子だったが、再び頷いた]