そう。犯人は他ならぬノイマン伯爵だったの。広場に集められた全ての時計の針を止め、時間を奪っていたの。彼の時計は特別な時計で、他人の刻む正しい時間を吸い取ってしまう効果があったの。

何故そんな事をしたかと言えば、････石化病に掛かったノイマン伯爵の妻の延命と、治療法の発見の為の時間稼ぎの為だったそうよ。

でも、でもね、結局はノイマン伯爵の行為は結果として妻を苦しめるだけだったの。

考えてみて？同じ時間が繰り返される。即ち、同じ状態を何度も何度も繰り返すに過ぎないわ。

彼の妻は、毎日毎日少しずつ確実に病魔に蝕まれる時間を繰り返すばかりで、病が癒える訳では無いの。時間を繰り返す限り、永遠に病魔にその身を侵される苦しみ、恐怖、痛み、絶望に縛り付けられてしまうの。

その内に、彼の妻は少しずつ狂気に犯され、精神を壊し、遂にノイマン伯爵の時計を壊してしまったの････。

時間泥棒の時計はとても特殊なのは、さっきも言った通りだけど、他人の時間を吸って繰り返す時計が壊されたならば、それは即ち『その時計を持つ人間が死んでしまう』と言う事なの。流れる時間を無理に堰き止めて、同じ流れを繰り返すと言う不条理の代償と言うのかしらね。

妻や民の事をとても大事に考えて、慕われていたノイマン伯爵の末路はとても哀しかったわ。

こうして、他人の時間を吸った時計が壊された事で、時を止められていた住人達にそれぞれの時間が戻っていわ。だけど、優しかったノイマン伯爵が治めていた静かな時間までは戻ってこなかったのよ。

ところで、気になるのは『誰がノイマン伯爵に他人の時間を吸う時計を渡したか。』じゃないかしら？

これに関しては憶測を出ないのだけれども『時を歪める者』が気まぐれに色々な時間や空間に出没して撒いているのでは無いかと言われているわ。

ノイマン伯爵が顛末を綴った手紙にも『妻の病気を治す手立てに悩んでいた私に、全身黒ずくめの翼の生えた若者が時の流れを堰き止める時計を渡してくれた。』とあったの。

もしかしたら、『全身黒ずくめの翼の生えた若者』とやらが全てを知っているかも知れないわね。

何のために、他人の時間を吸収する時計を作り出したのか、そして、それを誰かに渡しているのかも。

少し長く話し過ぎたわね。私の昔話に付き合ってくれてありがとう。

もしご要望があれば、二度目のローズマリーの話もさせて頂くわ。参考になるかどうか分からないのだけれどね。

さぁ、私はルルと寝る事にするわ。おやすみなさい。

ふむ…。
嫌な話だな。石化病もそうだが、時間を吸う時計…恐ろしいな。
ありがとう、ゼルマばあさん。ローズマリーとやらの話も聞いてみたい。

…他の国でもそういうことがある、か。
時間泥棒。思ったより厄介な連中なのか…？

うっ…べ、別に話を聞いて怖くなんてなってないんですからね。

…………ゲルハルト、こんな時に何処行ったのかしら…。

[不安そうな目で辺りを見渡している]

ああ、すっかり寝ちまった。
休みの日はだらけちまっていかんな。

うちのトウヘンボクは休みだってのになんやかんやと働いてるが。休む時は休めっての。

しかしあれかね。うちのちびすけが見つからないのも時間がループしてるから、だったりしたら厄介だな。

[何やら器に盛り付けて出す。]

さっきまで冷やしてたチーズ風味のデザートだ。
最近暑いからな。チーズ嫌いでなければ食べるといい。

[言うなり一足先に食べている。]

うん、うまい。

頂くよ。チーズは至高の食べ物だ。

半分娘に分けてやろう。トウヘンボクにはやらん（酷

時間が戻ってくれないと休み続きで商売上がったりなんだが。どうしたもんかね。

失礼します、皆様。
マスターアナに置かれましては、長く御傍を離れた事をお詫び申し上げます。

……ゼルマ様の昔話を御聞きすれば。
伯爵様の御気持ちは、私には少しわかるのです。…それも、この体には痛覚が存在しない所以かもしれませんが。
黒ずくめの若者…私のデータには余りそういった情報は御座いませんが、強いて言うならば、悪魔、と呼ぶに相応しいかもしれません。
…聖アントニウスの誘惑を思い出しますね。

前任地での残務処理が終わりました。
月曜には議論に参加出来ると思います。

あら、神父様お疲れ様。
今はお引っ越しなどで大変な頃かしら。

>>100ゲルハルト
んもう、ゲルハルトまでそんな話を…。
あんまり怖い話はしないようにと言ってますのに。

…と、とりあえず今夜はゲルハルトは私の部屋で番をするように。
り、理由なんて無いわよ、もうっっ

お、そいつはお疲れさん。
ホットミルクでも飲むか？

[また気まぐれに作っていたらしい。
羊がメルセデスの足元にすり寄って一声鳴く。]

こいつもお疲れさんって言ってる。
動物嫌いじゃなきゃなでてやってくれないか、神父サマ。