うたた寝していましたね…。

人を想うと、どうして心が締め付けられるのでしょう。
そんな気持ちに縛られつつ、そろそろ布教に向かうことにしますね。
マスター、ごちそうさま。

みなさん、おやすみなさい。

サイファの想い人って誰なのかしら…？

[...はサイファの背中をじっと見つめていた。]

サイファおやすみなさい。
少しでも心が安らぐといいわね…。

[...は心の中でそっとつぶやいた。]

[...はペンダントを握り締め、何かを願った。]

私も帰るわね。
マスター、おやすみなさい。

[...は月明かりの照らす大通りを避け、路地裏へ消えて行った。]

もうすっかり明るい。
鳥の声も聞こえてくるし、今日は良いお天気の一日になりそ。

あ、おはようございます、マスター。
実はマスターって双子だったり……しないよね？

ええっ、やっぱり！？　どっちがお兄さん？　へぇ〜。
お昼のマスターがお兄さんでお料理が得意、夜のマスターが弟さんでお酒系に強いって事なんだ。
生活パターンが殆ど逆転してるのね、だからいつでも。
あれ、でもお昼の出来事が夜に聞いても出てきたのは？
寝る前にお話ししてるの、そう。

どうして気付いたかって？
うん、いつかマスター指切った事あったでしょ？　河童の川流れみたく、マスターでもって思った。　で、その時絆創膏貼ったわよね。　イラスト入りの可愛いの。

その日の夜行ったら、それが普通の絆創膏に変わってて……やっぱり男の人には拙かったのかなって思ったんだけど、翌朝ご飯食べに来たら、私のあげたのが巻いてあって。

それで、おやって思ったのが最初。

それからね。
マスターの事見るようになったのって。

確かに似てるんだけど、微妙な雰囲気ってのが違ってるのが、だんだん判るようになってきた。

……ええ、そうね。　今のマスターの方が私は。

って、そう言えば今お名前呼ぼうと思ったら……まだ……一度も聞いたこと無かった。
なんだか、今更間抜けな気がしちゃうけど、聞いて良い？

うん、そうなんだ。　格好いいね。
弟さんは？
や、もう、そんな事じゃ無くって。
え？　冗談。
もう。

ふぅん、そうなの。　こちらは力強い感じ。


えっ、秘密に？
勿論よ、わざわざ気付いてないのに教えてあげることもね。

秘密よ、もちろん。

ふふ、くすくす。

今の何も聞いてない、聞いて無いったら聞いてない。
いいわね……。


くすって笑わないでよ〜。

あっ、それ美味しそう。
あーんって？

えっ、どういう事。

え〜、別に聞いてないから、私がお腹減ってるの知らないって。
そ、そうだけど〜。

うう……いじわるぅ。

もう……、負けたわ。　うん、降参。
だから……ね？


ふふ、ありがと。　オムライス、とっても美味し♪

美味しかった。

マスターのお嫁さんになる人って幸せだろうなぁ……。

えっ、違うって。
外で料理作ってる分お家では作ってもらいたいんだ。
そっかぁ、そんなものかもね。


あ、ローズヒップティね、これ。　ありがと。

この微妙な酸味が良いわね。

色もとってもきれいだし。　ガラスの茶器に映えてるわ。
朝日で浮かび上がった影もほんのり色付いてて。

ごちそうさま。
いつも通り……か、それ以上かな？　美味しかったわ。


いえいえ。

忘れてたわ、……先日伺った件だけど、……これ、エルンさんに渡しておいてくれる？
リアへのプレゼントって。

リングをシルバーのチェーンでネックレス仕立てにしてあるの。
デザインはウチでの売れ筋。　普通に売ってるのはメッキだし、ガラス玉だけど、これは特別製。
素材を変えて作ってもらったの。

こっちがエルンさん、こっちがリアのイニシャル入りね。
ペアよ。

これ、ちょっとした秘密があって……。

こうやってリング同士を合わせて捻ると……ほら。
くっついて離れなくなるの。

外すときは、こんな風に……。

ね？　知恵の輪みたいな仕掛けになってるのよね。
面白いでしょ？

……なんだか深読みできそうな感じじゃない？

さ、リングを元通りにつなぎ合わせて、蓋閉めて……と。

お願いね、マスター。


石も本物だからお値段はこれくらいになっちゃうけど、いわゆる三ヶ月分？
気に入って貰えると思うわ。