そのおばあさんは不治の病におかされていた。
僕がヤブ医者だからというのもあるが、そもそも見たことも聞いたこともない病で、原因も不明。
手のうちようがなかった。
その老夫婦は本当に仲が良くて、今まで何十年も一緒に連れ添ってきたのに、いや、連れ添ってきたからだろうか、別れるのが本当に辛そうだった。
おじいさんには何とかならないのか、このヤブ医者めと罵られた。ヤブ医者だから無理なんだろとか思ったりもした。
おばあさんが帰りがけにぽつり、こう言った。
「こんなときに時間泥棒さんがいてくれたら、ずっとおじいさんと一緒にいられるのに」と。