それにしても流石に歩いてくるのはちょっと疲れちゃったわ。
やっぱり息子に送ってもらうべきだったかしら。でも仕事のじゃましちゃ悪いものね、運動しないと早くボケるってお医者様も言われてるんだから、歩けるうちは自分の足で歩かなくっちゃ。
あぁ、そうそう。時計の話だったわね。こんなものが何の役に立つのか分からないけれど、私の自慢の品なのよ。
[その手には、茶筒を縮めたような浅い円筒の木箱。長い年月を経た飴色の蓋をそうっと持ち上げると、白木の文字盤が見えた。
ゼルマの時計はこの円筒型の木箱に埋め込まれた木製のものだった]