―ずっとさきのはなし―[ぼくは、今日ものんびりとカウンターで店番をしている。店を引き継いでからどれくらい経っただろう。三十年を越えた辺りから数えなくなった。もっとも、みんなの記憶ではパン屋の主は代替わりしていることになっているのだけど。]今日もいい天気だねえ…っと?いらっしゃ………。[入ってきた客の姿を見て、ぼくは思わず立ち上がった。見間違えるはずなんてない。]おかえり、待ってたよ。[ようやく、借りていたものを返せそうだ。**]