ねぇ、知ってる？　あの噂。　あの事件って本当はね……。

…どうも。
うちの羊見ませんでしたか、ホラントさん。
一番ちっこいやつです。これくらいの。

[身振り手振りで大きさを示す。]

あと、ついでに村長も。…呼び出しておいていないのかと問い詰めたい。半日ほど。

[腰には羊の透かし彫りが見事な手巻きの懐中時計をぶら下げている。]

………。
まあ、いいか。探してきますんで、村長が来たら宜しく伝えておいてください。

…それじゃ。まあまた戻ってきますんでそこは心配せんでください。

[足元の羊を抱き上げて、集会場を去っていく。]

時間泥棒？さっさと見つけちまおうさ。
商売あがったりだよ、ホント。

[腰のホルダから仕立て鋏を取り出してジャキジャキと動かして見せる。ホルダの端には蓋に鋏の意匠凝らした時計を下げている]

ホラント、村長見かけたら何でもいいからとっとと片付けちまおうさ、て伝えといておくれ。

あたしはチョイト仮縫いが残ってっからまた後で来るよ。

あぁ忙しい忙しい。あと7分で支度を整え、外に出て馬車をつかまえるのに2分。向こうに着くまで22分といった処かしら。
何故こうも忙しいのかしら。時間がいくらあっても足りはしないわ。
その上時間泥棒ですって？これ以上忙しくなるのは勘弁して欲しいものね。

[胸元のプラチナのネックレスの先端には、竜胆の紋様が刻まれた銀の懐中時計が輝いている]

今日はこの後隣町で麦の先物取引がありますの。
近隣の飢饉からおそらく今年この後値上げが予想されますから、今日は大事な日なんですわ。
遅れる訳にはいかないんですの。

[胸元の時計を開き、時間を気にしている様子]

時間泥棒、ですか。
時間が盗まれるとなると…私も恐らく、行動を止めるでしょうね。
……この時計が無ければ、私はただの人形ですから。

[胸元に付いた金具に、スケルトン式の時計が文字通り『嵌めこまれて』いた。彼自身が時計であり、とある変わり者の細工師の遺作だった。自動巻き式のそれは、動くたびに微かにかちゃりと音がする]

…見つからない。
いつもならそろそろおなかをすかせながらめえめえ言ってるはずなんだが。困った。

[抱えた羊の毛をなでつつ一度集会場に戻ってくる。]

うちの羊見なかったか？今抱えてるのよりちっこいんだが。

羊かい？黒いやつだったら昨日村はずれで草食ってるの見たが…そいつよりは小さくなかったかもしれないねえ。

一応呼ばれたので来ましたが…村長はまだ居らっしゃらないので？
[書類に目を落としてから、小脇に抱えたうさぎのぬいぐるみを弄る。]

『現在の時刻は、19時22分くらいダヨ！』

[小さな声でちゃんとぬいぐるみが返事するのを確認すると、それをとんと床に置き]
村長に家から持って来いと言われまして…似合わないでしょう？
こんなんでも有名な時計鍛冶に作らせたらしいですよ。どうも私が生まれたときに、祖父が女の子と間違えて慌てて頼んでしまったそうで。

まあ私の代わりにしばらくこいつをここに置いておきますね。まあ目立つ品ですから盗む人もいないでしょうし…

[そして村長を探してうろうろと去っていった**]

黒いのは戻ってきてる。
ふらりと出て行っては戻ってくる奴だから。

…うさぎ。

[おいてあるぬいぐるみが気になって仕方ない。**]

…申し上げます、マスターアナ。
麦の買い付けでしたら、二つ隣の村の方が安値で入手できますかと。
そうなると馬車での移動時間が１時間１５分２３秒かと。天候が晴れ、かつ風の無い日を想定しております。
準備のお時間を考えれば、二分後の馬車よりも１７分後の馬車の方が宜しいかと。

アルベリヒ様、今晩は。
……羊、ですか？そして現在御持ちの羊より小さいもの。
検索いたします、少々お待ちを。

…………………。
どうやら、私の視覚範囲内には入っておりません。お役に立てず、申し訳御座いません。

あら、ゲルハルト。
二つ隣の村まで行くとなると、おそらく日帰りは無理。
となれば、明日予定されている卸問屋の会合に間に合わないわ。
もっと早く移動出来れば良いのだけれどね…移動時間を盗んでくれるとか、そんなのだったら時間泥棒も嬉しいのだけれど。

…うさぎ？
[一瞬年相応に可愛い物に反応を示しそうになり、慌てて姿勢を正している]

申し上げます、マスターアナ。
恐らく、其処は麦の価格を優先するか、卸問屋様の会合を優先するか、で御座います。二つ隣の村まで出られるのならば、いっその事馬車ではなく使いをやる、と言う手も御座いますが…あまり御勧めしません。
……私が交渉事の知識を組み込まれていれば良かったのですが…マスターも其処は苦手所、私に組み込む程の知識は無かったようです。申し訳在りません。

(　ﾟДﾟ)ｙ−~~


…集会所って禁煙だったかねえ。まあいいか。

しかし良い夜だね。月見酒にもってこいだ。

[…は持ち込んだスキットルを片手に一服。]

うさぎはいい。たべてよしめでてよし。
…逆だったか？

まあこれはぬいぐるみだが。

うさぎの形、ですか。綿、布、そして精巧な歯車。素晴らしい作品ですね。大変興味深い。

私以外に、話をする時計を始めて拝見しました。

……うさぎの調理法…パイやシチューでしょうか？私は食物摂取は出来ませんが、美味しそうに食されるのを拝見したことがあります。

しかしそういう事を言うと女子連中によく怒られる。
何故だろう。はて。

……曰く、デリカシーと言われるもの、ですね。
女性は小動物を食料とみなす事はあまりせず、愛玩がより強くなる傾向が。

う、うさぎをパイやシチューですって…？
わ、私だってその位食べようと思えば…。

[チラリとウサギのぬいぐるみを横目に見て、声を詰まらせる]

…あいにく、肉よりも魚や野菜の方が好きみたい。
別に変な感情なんて抱いてないんですからね！

御疲れ様です、マスターアナ。
……うさぎのパイやシチューはお好みでは有りませんでしたか。データを更新します。

………。
本日のご夕食は鮭のムニエルとサラダに致しましょう。手配しておきます。

ゲルハルト、ありがとう。ムニエルは大好物だわ。
それでお願いするわね。

ウサギは……うぅん、何の肉か言われなければ躊躇なく食べれるのかもだけど…知ってしまうと、手が止まってしまう気がするわね…。
きっとアルベリヒだってラムやマトンを見たらそうなるに違いないわっ

…否定はしない。
基本的に毛を刈るだけだからな。

[抱えている羊をなでる。]

鮭もいい。
たべてよしめでてよし。

…逆か？まあ細かいことはいいじゃないか。

……鮭を愛でるんですの？

[想像しているらしい]

……ふ、不思議な趣味をお持ちですのね…。

びたんびたんと跳ねるぞ、あれ。
鑑賞したあとは普通に食べるが。

[一体どう愛でているのかははぐらかした。]

ラムやマトン、アルベリヒ様は苦手なのですか。データを更新します。

…………。
アルベリヒ様も鮭のムニエルとサラダはいかがですか？

ああ、それじゃ頂こう。
…料理が出来るのか。味見せずに調理が出来るというのもまた珍しい。

[そもそもどう調理しているのだろうと言いたげな視線をゲルハルトに送る。]

調理方法を拝見すれば、データとして記憶できます。
……レストランを観察して学習いたしました。手法だけ見れば恐らく小料理屋の料理長、で御座います。

[テーブルと椅子の準備をしている]

ゲルハルトは調味料の量など全て正確に記憶しているの。
創作は苦手だけど、決まった味付けを忠実に再現するという意味では腕のいい料理人なのよ！

[と、何故かアナが偉そうにふんぞり返っている]

…それは興味深い。
ところでアナとゲルハルトは主従関係なのか？

[そういえばそんな雰囲気がするような。]

[皿の用意をしつつ]

…そうですね、其の通りです。
私の最初のマスターは、マスターアナの曽祖父で御座います。それより代々当主の時計人形として御傍に置いていただいております。

随分大事にされてきているんだな。
職人の腕もあるのだろうが、整備の賜物でもあるのかな。

[近くの椅子に座り、料理を待つ。**]

……という事なの。
私の時計はこの両親の形見のネックレスでもあり、曾祖父が残してくれたゲルハルトでもあり。
私は厳密にはまだ当主ではないので、ゲルハルトは私個人に仕えているという訳ではないのだけど。
病床の祖父にかわり、事業を切り盛りする私の手伝いをしてくれているわ。

はい、マスターアナの御家の当主様はそれはもう大事に整備をしてくださいます。
私自身でも自己メンテナンスは出来ますが、矢張り手が回りませんので、大変助かります。

[アルベリヒとアナの席の前に料理を並べる。思いのほか小奇麗に盛り付けが為されている鮭のムニエルと、新鮮そうなサラダを隣に]

スープがご入用でしたら、御声をおかけくださいませ。

……マスターアナ、私は貴女がお生まれになってから、貴女を当主としてデータを更新しております。

………貴女が生まれてから、私は貴女の人形で御座います。……未だお認めにならないのですね、マスターアナ、貴女の手腕は御爺様がお認めになるほどのもの。胸を張って宜しいかと。

ムニエルとサラダ、いただくわね。パンとスープもお願いするわ。
[アナは椅子に座り、心なしか嬉しそうにナイフとフォークを手にした]

…だって、名目上はまだお祖父様が当主ですもの。
ゲルハルトには助けて貰っているし、感謝しているわ。でも、まだ私を当主と認識するには早すぎるわよ。

了承致しました。オニオンスープとパンで御座います。

[パンの入ったバスケットをテーブルに置き、スープを運んでくる]

……実質はマスターアナが当主で御座いますが…。
私の助けは日常のお手伝い、其れは代々の当主様にも致しておりましたのと同じ事です。
………了承致しました、マスターアナ。

[あまり変わらない表情が心なしか不服そうに見える]

うっ……な、なんでそんなふてくされた顔になるのよ、もう…うー…。

わかったわ、実質貴方にはそういったお手伝いをお願いする事として…まぁ、名義を受け継ぐのはまだもう少し先になるけれどもね。
せめて私が成人してから、かしら。
それまでもそれからもよろしくね、ゲルハルト。

………私は時計人形で御座いますから…ふてくされた顔はしておりません。全くもって。

……はい、了承致しました、マスターアナ。

[表情はどことなく満足げに見える**]

村の教会に赴任してきたメルセデスと申します。
どうぞおみしりおきを。

こんにちは、神父サマ。
昨日のムニエルやスープの残りがまだあるみたいだから、良ければ温めなおそうか。

温めればまだおいしいはず。多分。

[膝の上で羊が一声鳴く。]

そういえば神父サマ、ここへ来る途中に迷える子羊を見かけませんでしたか。
…いや比喩ではなく、本当に子羊なんですが。こいつよりちっこい奴で。

いえ、羊は見かけませんでしたよ。
そうそう。今日は着任のご挨拶に伺っただけでして、前任地に少しばかり残務整理がありましてね、ここへはしばらくは時々しか顔を出せないと思うのですよ。

時の記念日が、私の正式の仕事開始の日でしてね、その日からはずっと顔を出せると思うのですが。
前任地との往復の時にも羊が居ないか気をつけて見ておきましょう。

そろそろ馬車の出る時刻かな?

[そう言うと胸元のクルスに仕込まれた時計で時刻を確認する]

(　ﾟДﾟ)ｙ−~~

そうか。それは大変そうだ。
残務処理が早く終わるよう祈っておく。

馬車も時間通りに出るといいんだが、ここのところどうも…いや、気のせいだとは思うが。

時間泥棒がこの村にも紛れ込んで居ると聞きましたよ。まさか、人生で三度も遭遇する事になるだなんて。

時間は、皆に平等に与えられるもの。どうか、自分以外の時間を盗むだなんて事を思い止まってくれないものかしらね。

煙草の吸いすぎは身体に毒だと思うぞ。

［膝元の羊は煙が嫌いなのかころりと丸まった。］

[…は、首にかけた古びた真鍮のロケットペンダント型の時計を取りだし、少し哀しげな表情を浮かべながら文字盤を見つめる。彼女の時計はアンティークな親指程の大きさの時計。小さい時に死別した母親から譲り受けたもので、50年以上肌身離さず大切に持ち続けている。]

あら。もうこんな時間ね。黒猫のルルにご飯をあげないと。日が沈む前に夕食の支度を済まさないとだわ。
[…は、文字盤から目を離し、大事そうに折り畳むと、服の中にしまい。傍らの黒猫を抱き上げて家路に付いた。]

ゼルマ婆さんも呼ばれたんですか。
三度も呼ばれた…それはまた。経験者が呼ばれたという事は…時間泥棒が来たという噂も本当なんですかね。

…うちのちっこいのが見つからないのもそのせいってことは十分考えられるかもなあ。

[羊を撫でながら、思案する。]

神父様にゼルマさん、こんばんは。
時間泥棒ね…最近特に忙しいと感じるのはそのせいなのかしら？
あぁもう忙しいったらありゃしない。

[伝書鳩が手紙を運んでくる]
村の皆様の集りぐあいはいかがでしょうか。
なるべく早そちらに戻れるようにいたします。
--
神父より

御疲れ様です。
ゼルマ様の仰りようを拝聴致しました。

……三度も。思いの他不心得者は多いのですね。

……………そういえば、私も最近自己メンテナンスが多くなった気が。
[はめ込まれた時計を伺うように一瞥する]

時計の持ち主は時間の停滞から逃れられるっていう伝承があったっけ。
本当だとしたら、村の時間自体停滞してる可能性もあるんだよな。

同じ一日が繰り返されるとかなんとか、だったか。
眉唾だと思ってたんだが、経験者がいるとなると…。

[自分の時計を手に取り、じっと見つめる。]

………村の時間の停滞、ですか…。
私のようなものに生命活動終了へのカウントダウンはありませんが、人には由々しき問題ではないのでしょうか。
もしかすれば、時計主の皆様が百年を経過しても、村は百年前のまま…少し大げさな喩えですが。

言い伝えが本当なら、それも大袈裟なたとえでもないだろうなあ。
そうなると迷子のちびすけがずっと迷ったまんまってことになりそうでいやなもんだ。

ちと探してくる。それじゃあな。

[羊を抱えたまま、集会場を出て行った。**]

(　ﾟДﾟ)ｙ−~~

[...は今日も月を見ながらスキットル片手に一服。]

あした仮縫い何件入ってたっけなあ…

ん、なんだあれ。



…羊？

いや山羊か？
どっかの脱走家畜かねえ。

…ん、どっかで聞いたな、脱走羊。んー。

…山羊じゃない。うちで山羊は飼っていないからな。

[戻ってきていたらしい。]

………寝てるのか。

それにしても、集まりが悪いな。
村長も時計持ちを集めるのに苦慮しているってことか？
うーん…。

[時計の螺子を巻きながら、休憩中。**]

ああ、そうだ羊を探してたのはアルベリヒだっけか。

まあ集会なんざ始まるぎりぎりまで集まらないものさ。
村長もどっか行っちまってるし、待ちぼうけしたくなくて様子見てる奴もいるだろ。招集は既にかかってるんだ、時期が来たらそいつらも集会場に現れるだろうさ。

ふわあ…眠いな。寝てていい？

子羊ではなく山羊が見つかったの？惜しいわね。

皆さんもお忙しいのかしら。まぁ、急ぐ訳でもなし、ゆっくり集まってもいいんじゃない？

山羊と子羊は大分違うと思うぞ。
字面は似てるが本質が違う。

[ぶつくさいいながらホットミルクを作っている。]

どっちもめーめー鳴くぞ？

そんなこと言うならわかしたてのホットミルクはやらん。

[ホットミルクをカップに入れ、ちびちび啜っている。**]

えー。

ああでも山羊からウールはとれないな。

うん、羊は偉大だ。

おはようございます。これから梺の町まで行かなくてはならないの。戻ってきたら、私の昔話をしようと思うわ。一度目の時間泥棒のノイマン伯爵のお話と、二度目の時間泥棒のローズマリーの哀しいお話を、ね。

さ、ルルや、おいで。

失礼、少し立て込んで居りました。
メンテナンス用の器具・部品の調達は矢張り時間がかかるものですね。

アルベリヒ様のお探しの羊ですが・・・私のいた方にも見当たらず。お力になれず申し訳ありません。

おや・・・お早う御座います、ゼルマ様。
過去の時間泥棒のお話、楽しみにして居ります。
行動パターンが読めれば、対策も立てやすいでしょうし・・・何より、人が禁じる行為と知りつつ行う、その意図が私には難しい。私のようなものは、禁じられると書き換えがない限り行動できませんから。

行ってらっしゃいませ。お気をつけて。

そう、それだ。山羊からウールは取れない。
…まあ、山羊の乳から取れるチーズはうまいが。

[ホットミルクをまた沸かしてみた。]

飲むか？飲まないなら自分で飲むが。

時間泥棒…。
伝聞でしか聞かないもんだから、いまいち現実味がないな。
ゼルマばあさんから話を聞けば認識を改められるんだろうか。

[二杯目のホットミルクを啜る。**]

ミルク頂くよ。

山羊チーズな。あれはうまい。
あれなんていうんだっけ、頭切ったピラミッド型の。ナポレオンのエジプト遠征失敗がどうとかってやつ。あれ旨いぞ。

ヴァランセ？確かそんな名前。

あとヒレな。子山羊のヒレは旨い。山羊鍋も旨い。

羊も旨いが、基本的に羊は愛でるものだと思う。

(　ﾟДﾟ)ｙ−~~

旦那のデコがまた広くなってた…
去年まで指6本分だったんだがなあ…

図体ばっかでかくて使えねえ奴だってのに…
さらにデコか…はぁ…

『ユタカ・ミズタニみたいだろ？』とか言ってたが…
誰だよそれ…

凄い雨ね。昨日は村に戻るのを諦めて町の友人の家に泊めて貰ったわ。

さて、それではこの婆の昔話に付き合って頂きましょうかしら。ルルや。膝においで。

一度目の騒ぎは私が16歳の時だったわ。当時、たった一人の肉親である母を亡くしてから、私は単身別の国から国へと放浪していたの。

そんな中、ノイマン伯爵と言う斥候が収めるキルステン国に滞在していた折に巻き込まれたのよ。

最初は違和感に気が付かなかったの。何故なら満月の夜だったから。時が停滞しているだなんて3日、4日は思わなかったわ。満月を挟んだ3日なんて満ち欠けは分からないもの。

でも、その内に満月が何時までたっても欠けない事に気が付いた住人達は、お互いの時計を持ち合ってノイマン伯爵の元へ相談に行ったのよ。

『時間が繰り返されている。』『永遠にループしている。このままでは時の檻に閉じ込められて、何時しか時間が止まってしまう。』と。

そこでノイマン伯爵はこう答えたの。『もしかすると、時間泥棒の仕業かも知れない。時間泥棒が居るかどうか、ハッキリさせるために、住人が持つ時計を広場に全部集めなさい。針の動きが違う時計があれば、それが時間泥棒の印のはずだ。』と。

勿論、住人はその通りにしたわ。私含めてね。全ての住民が時計を持ち寄り、一つ一つ調べて行ったわ。

でもね、結局住人達の時計は寸分違わず正しい時を刻み続けていたの。誰一人の時計として、狂っては居なかった。住人達が、旅人である私を睨み付けたその瞬間。････私以外の住人達の時が止まった。いいえ、止められたの。私は自分の時計を肌身離さず身に付けていたお陰で時間の停止から逃れられたんだけどね。

そう。犯人は他ならぬノイマン伯爵だったの。広場に集められた全ての時計の針を止め、時間を奪っていたの。彼の時計は特別な時計で、他人の刻む正しい時間を吸い取ってしまう効果があったの。

何故そんな事をしたかと言えば、････石化病に掛かったノイマン伯爵の妻の延命と、治療法の発見の為の時間稼ぎの為だったそうよ。

でも、でもね、結局はノイマン伯爵の行為は結果として妻を苦しめるだけだったの。

考えてみて？同じ時間が繰り返される。即ち、同じ状態を何度も何度も繰り返すに過ぎないわ。

彼の妻は、毎日毎日少しずつ確実に病魔に蝕まれる時間を繰り返すばかりで、病が癒える訳では無いの。時間を繰り返す限り、永遠に病魔にその身を侵される苦しみ、恐怖、痛み、絶望に縛り付けられてしまうの。

その内に、彼の妻は少しずつ狂気に犯され、精神を壊し、遂にノイマン伯爵の時計を壊してしまったの････。

時間泥棒の時計はとても特殊なのは、さっきも言った通りだけど、他人の時間を吸って繰り返す時計が壊されたならば、それは即ち『その時計を持つ人間が死んでしまう』と言う事なの。流れる時間を無理に堰き止めて、同じ流れを繰り返すと言う不条理の代償と言うのかしらね。

妻や民の事をとても大事に考えて、慕われていたノイマン伯爵の末路はとても哀しかったわ。

こうして、他人の時間を吸った時計が壊された事で、時を止められていた住人達にそれぞれの時間が戻っていわ。だけど、優しかったノイマン伯爵が治めていた静かな時間までは戻ってこなかったのよ。

ところで、気になるのは『誰がノイマン伯爵に他人の時間を吸う時計を渡したか。』じゃないかしら？

これに関しては憶測を出ないのだけれども『時を歪める者』が気まぐれに色々な時間や空間に出没して撒いているのでは無いかと言われているわ。

ノイマン伯爵が顛末を綴った手紙にも『妻の病気を治す手立てに悩んでいた私に、全身黒ずくめの翼の生えた若者が時の流れを堰き止める時計を渡してくれた。』とあったの。

もしかしたら、『全身黒ずくめの翼の生えた若者』とやらが全てを知っているかも知れないわね。

何のために、他人の時間を吸収する時計を作り出したのか、そして、それを誰かに渡しているのかも。

少し長く話し過ぎたわね。私の昔話に付き合ってくれてありがとう。

もしご要望があれば、二度目のローズマリーの話もさせて頂くわ。参考になるかどうか分からないのだけれどね。

さぁ、私はルルと寝る事にするわ。おやすみなさい。

ふむ…。
嫌な話だな。石化病もそうだが、時間を吸う時計…恐ろしいな。
ありがとう、ゼルマばあさん。ローズマリーとやらの話も聞いてみたい。

…他の国でもそういうことがある、か。
時間泥棒。思ったより厄介な連中なのか…？

うっ…べ、別に話を聞いて怖くなんてなってないんですからね。

…………ゲルハルト、こんな時に何処行ったのかしら…。

[不安そうな目で辺りを見渡している]

ああ、すっかり寝ちまった。
休みの日はだらけちまっていかんな。

うちのトウヘンボクは休みだってのになんやかんやと働いてるが。休む時は休めっての。

しかしあれかね。うちのちびすけが見つからないのも時間がループしてるから、だったりしたら厄介だな。

[何やら器に盛り付けて出す。]

さっきまで冷やしてたチーズ風味のデザートだ。
最近暑いからな。チーズ嫌いでなければ食べるといい。

[言うなり一足先に食べている。]

うん、うまい。

頂くよ。チーズは至高の食べ物だ。

半分娘に分けてやろう。トウヘンボクにはやらん（酷

時間が戻ってくれないと休み続きで商売上がったりなんだが。どうしたもんかね。

失礼します、皆様。
マスターアナに置かれましては、長く御傍を離れた事をお詫び申し上げます。

……ゼルマ様の昔話を御聞きすれば。
伯爵様の御気持ちは、私には少しわかるのです。…それも、この体には痛覚が存在しない所以かもしれませんが。
黒ずくめの若者…私のデータには余りそういった情報は御座いませんが、強いて言うならば、悪魔、と呼ぶに相応しいかもしれません。
…聖アントニウスの誘惑を思い出しますね。

前任地での残務処理が終わりました。
月曜には議論に参加出来ると思います。

あら、神父様お疲れ様。
今はお引っ越しなどで大変な頃かしら。

>>100ゲルハルト
んもう、ゲルハルトまでそんな話を…。
あんまり怖い話はしないようにと言ってますのに。

…と、とりあえず今夜はゲルハルトは私の部屋で番をするように。
り、理由なんて無いわよ、もうっっ

お、そいつはお疲れさん。
ホットミルクでも飲むか？

[また気まぐれに作っていたらしい。
羊がメルセデスの足元にすり寄って一声鳴く。]

こいつもお疲れさんって言ってる。
動物嫌いじゃなきゃなでてやってくれないか、神父サマ。

家帰ったらトウヘンボクいなかった。
どこほっつき歩いてるんだろうね？

今晩は。私の方も手続き準備が一通り整いました。御疲れ様です。

マスターアナ、了承致しました。よく御休みになられるよう、ラベンダーの香でも焚いておきましょう。
…御休みの前に、アルベリヒ様にホットミルクを分けて頂いては？

メルセデス様もお疲れ様です。
私の方も所用準備整いました為、開始期には腰を据えられるかと。

>>105
うん、そうするわ…。
お香もよろしくお願いするわ。
でも、ちゃんと寝付くまで傍にいるのよ？いい、わかった？

おや、イゾルテ様も今晩は。

>>107
マスターアナ、了承致しました。随時、ご準備いたします。
私も御傍にお控えいたします。マスターアナがご起床なさるまで御傍に控えております。

>>108
……絶対なんだからね？

[と、ゲルハルトの衣服の裾を掴む]

少し早いけど、今日は屋敷に戻りますわね。
…ゲルハルトも、一緒に帰りましょう？**

早く元に戻らないとなぁ……。

ん？
マリオンか。元に…ってのは何の話だ？
時計が壊れたとかじゃなさそうだが。

あら、ごめんなさいね。ちょっと遠出してしまったわ。

今夜にでも、ローズマリーのお話をさせて頂くわね。時間は繰り返せても、運命は変えられなかった、ローズマリーとアーデルハイドの物語を。

おはようございます。
ようやく、こちらの仕事に取りかかれるようになりました。
よろしくお願いしますね。

来て早々に寝ちゃったから、挨拶しそこねちゃったよ。

[…はバツが悪そうに頭を掻く]

っとアレは取られてないよな？

[何かを探して見つけたのは、どうやら古びた懐中時計だった]

おー、あったあった♪
コイツが無きゃ泣くに泣けないよ。

このクルスに組み込んである時計はね、看護師さんの時計と同じで12時が下で6時が上なのよ。

ほう。それはまたすごい時計だな。
神父サマの時計が看護士の時計と同じタイプである理由ってのは何かあるのかい？

おれのは代々羊飼いだからかね、多分。
わりとなんの捻りもない理由だが。

[そんなことを言いつつ、丁寧に螺子を巻く。]

うちのは爺様が旧知の時計職人に作らせたっていう話。針が縫い針になってるのがポイント。

ま、これのモデルになった羊はなんかとてもいい羊毛が取れた凄い奴らしいんだが。

…ちょっと眉唾。

ほう。いい羊毛と聞くと俄然神々しく見えるな。

…そいつもなかなかいい毛をしてるが、まだ刈らないのか？

かちこちかちんと針が鳴る♪
時を刻んで針が鳴る♪…っと。

[適当な歌詞の歌を口ずさみながら、集会場へやってくる一人の女性。
その手には、時計が埋め込まれた工具箱。]

…時計持ってる人が集まってるって言うのはここですか？
………場所、間違えて無いよね？

ウイーッス。

時計が壊れてるって聞いてやってはきたが、どうもそんな単純な話じゃあなさそうだな…。

しばらく滞在するからよろしくな。
2，3日は調べ物するから反応は少ないけど滞在所にはいるんで気にしないでくれ。

おはようさん。なんか集まれ言われとったけどここでよかったん？
あと、なんや時計持って来いってこんなんでええの？

[そう言って、エプロンのポケットに無理やり入っていた物を引っぱり出す。
レトロなベルつきの目ざまし時計だった。]

ダメって言われると困るんやけどなあ。俺の所、あと店の柱時計くらいしかあれへん。けどアレ重いし。
生地練るのに腕時計つけていられへんし、粉ついた手で懐中時計とかも弄れへんもん。

ううんっと、とりあえず顔出しだけしとくなー。店終わったらまた来るなぁ。
そんじゃ。

なんか人増えてる。

そろそろうちのちび共が腹減らして泣き出す頃だし、飯作ってくるわ。
ばーちゃんが作っててくれたら楽なんだが…期待はせんどこう。イモウトも今日は仕入れでいないしな。

時計の故障ではないらしいぞ。
村長曰く、時間泥棒が来た影響らしいが。
あとヨハン…は行っちまったか。あの時計持ってこないと集会場には入れないらしいぞと言う心算だったんだが…。

さて、と。

[テーブルにあった羊皮紙とペンを手に取る。]

ちびすけの似顔絵でも描いてみるかね。

[しかし、出来上がった絵はどう見てもわたぼこりに足が生えたようなシロモノだった！]

絵を描くのは苦手だ。

しかしヨハンとこの時計は目覚まし時計か…パン屋は朝早いらしいからなあ。

[しみじみ。]

おや。可愛いじゃないか。

…毛糸玉かい？牧場のマスコット？
いま流行のゆるキャラってやつなのかね。

おやまぁ、町へ行っている間に皆さんお揃いで。

さて、もう一つのローズマリーとアーデルハイドの物語を語らせて貰うわ。長いけど、この婆に少しだけ付き合って頂戴ね。

ノイマン伯爵が治めていたキルステンを出た私は、グラスゴーの郷、ルエン大都市国家、港町フュート、グラン王国等を転々としていたわ。

私が28になった時、静かな山間のサナールの街で体験したそれはそれは哀しい結末の物語よ。

サナールの街での暮らしはとても慎ましく素朴で、自然と調和した生活を送っていたの。

そんな中、街で結婚間近の、将来はおしどり夫婦になるって確信されていたローズマリーとアーデルハイドの二人が居たの。二人とも深く愛し合っていたわ。見ているこっちが照れてしまう位よ？

静かに淡々と時が流れる街で、二人の結婚式は収穫祭の最終日、そう。９の月の２３日に決まったのよ。

街での一大イベントの収穫祭と、愛し合う二人の結婚式のダブルのめでたいイベントとあって、大はしゃぎだったわ！

私もローズマリーの衣装合わせやら、収穫祭自体の準備で忙しくも楽しい日々を送っていたの。本当に楽しくて、夢のように時間が過ぎていったわ。

でもね･･･。結婚式は開かれることは無かったの。

･･･。収穫祭の最終日の前日にアーデルハイドが事故で無くなったの。結婚式に使う食材を、鹿や猪の肉を持ってくるって山に意気込んで入ったまま、その日は帰ってこなかったの。

心配したローズマリーが山を一人探索に行くと、無残にも獣に食い荒らされたアーデルハイドの遺体が見えた。

ローズマリーは号泣したなんてもんじゃ無かったわ。狂ったように泣き叫び、呪いの言葉をぶちまけてしまったのよ。余りに酷く慟哭していたものだから、私達は彼女を暫く一人にしたの。

それが、もっと大きな悲劇を招く事とは知らずにね。

暫くして、気がつくと、ローズマリーとアーデルハイドが楽しそうに談笑しているの。彼らの結婚式に何の料理を出そうかって話を街のみんなでしていたわ。

私はほんの少しだけ違和感を覚えていたけど、その時はなんだったか分からなかったけど、すぐに収穫祭の準備に没頭したわ。なんてったって、明日は結婚式なんですものね！

その内に、ローズマリーは、アーデルハイドと一緒に一番近くのバスクの村まで買い物に行くことになったみたいなの。ちょっと時間も遅かったけど、月も出ているし、アーデルハイドも居るから大丈夫だろうと思って皆して見送ったわ。

･･･その後、村に戻ってきたのは瀕死のローズマリーと暴漢に襲われて亡くなったアーデルハイドだったけれどね･･･。

慧眼の皆さんは分かったでしょう？

ローズマリーが時を繰り返す時計を使って、なんとしてもアーデルハイドを助けたかったって真実が。

でも、それにも関わらず、山に入って獣にやられたアーデルハイドを村までの買い物に誘えば帰りに暴漢に会うし、二人の家で静かに過ごそうと思えば、ランプが急に倒れて火事になって黒こげ。

宴会場で皆で騒ごうとすれば、一気飲みをさせられてアルコール中毒でアーデルハイドは倒れて死んでしまうし･･･。

ローズマリーが、彼を助けようとして、時計の力を使えば使うほど、時間はねじれて曲がっていく。

それに最悪な事に、アーデルハイドは自分が毎回死んでしまっている事には気がつかない。次第に彼の生死を案じるローズマリーが疎ましくなってしまって二人の仲は険悪に。

ローズマリーも真実をアーデルハイドに話しては見るけど、彼はにわかには信じられずにローズマリーを不振がるばかり。

ローズマリーの苦肉の策で、ローズマリーがアーデルハイドを刺した瞬間に、時を戻せばアーデルハイドも信用してくれるだろうと考えた彼女は、アーデルハイドに自分の考えを話し、時間を撒き戻すことで話はまとまり実験に移ったの。

でもね、予期せぬ事が起こったの。

ローズマリーはアーデルハイドを刺した後、時間を撒き戻そうと、不思議な時計を使ったけど･･･もうその時計は動かない、戻らない、ちっとも時を操ろうとしなかった。

当然。ローズマリーに刺されたアーデルハイドは出血多量で死に、後には愛する人の血にまみれて壊れたローズマリーしか残っていなかったの。

ちなみに、私が何でこの話を知っているのかというと、ローズマリーが７回ほど繰り返した記録を日記につけていて、その日記を私が受け継いだからなの。

やはり、この時計についても、『彼女が最初のアーデルハイドの死を嘆き悲しんでいる時に、金髪碧眼の綺麗な翼の生えた黒衣の少女がやってきて、愛する人を助けるための力を貸してあげる。』と時を繰り返す時計をローズマリーに与えたそうよ。ノイマン伯爵に渡した人物と繋がりはあるのかしらね？

正気を半分以上無くしてしまったローズマリーは震える手で、隣に住んでいた私の呼び鈴を鳴らし、記録をつけたノートを渡すと、そのまま、暗闇に消えてったわ。

･･･自ら殺めてしまった最愛の亡骸を抱いて、絶壁から飛び降りたって日記の最後の頁に書き記してね･･･。

時間は繰り返すだけで、運命は変えられなかった件を２回ほど見てしまったわ。なんて物悲しいのかしら。

それよりも気になるのは、そんな摂理に逆らうような時計を撒き散らす存在よ。人々に希望を振りまくフリをして、結局は絶望しか刈り取らないのだから。

さて、ごめんなさいね。長くなっちゃったわ。

参考になるか分からないけど、聞いてくれてありがとう。

もし何か気になることがあったら聞いて頂戴。分かる範囲で答えるわ。

んー。で、今一体何が起こってんだろうな？
いまいち把握できてなかったりする。

とりあえずこの村の時間がおかしい。それは理解した。
どうもうちのばーちゃんが毎日毎日同じようなこと言ってくるんだよな。ついにボケたかと思ったら、ちび共までおんなしような感じ。旦那はフェルト仕入れに行ったまま帰ってこないし。何がどうなってんだか。

ありゃ、そんな事になってるんですか？
最近ずっと部屋に籠ってたから良く分かんなかったけど、言われてみれば微妙に変なんですよねー。
組み立てた人形が朝起きたら見当たらなかったり、
使ったネジがいつの間にか補充されてたり。
…補充されたんじゃなくて使った分が元に戻ってたんですね、アレ。

んー…そうなるとおれんとこのちびすけも時間泥棒をどうにかしないと見つからない可能性が高いってことか…。
時間泥棒の動機がゼルマばあさんの語ったようなものでもそうでなくても。ほっとくのはまずそうだな。

あとあれだ、これはちびすけを描こうとして失敗したんだゆるキャラ言うな。

[絵を筒状に丸めてイゾルデをぺしぺし。]

なるほど。ドロテアんとこの状況が一番わかりやすい。
しかし組み立てた人形が元通りになってたら徒労にも程があるな、気の毒に。

しかしなんだ、黒衣の青年に少女なあ…。
村長から聞いた話には出てこなかったが、そんなんが暗躍してるんかね。

なんにせよ、用心するにこしたこたないか。

…あと、こいつの毛はまだ刈らない。
もうちょっと食わせて毛の艶をよくしたいところでな。

[羊を抱き上げて撫でる。]

あれー？何や中入られへんのー？
おっかしーなー。昼間入れたのにな。みゅー。
まあええけど。どーしよ。

[集会所の回りをウロウロとしては*首を傾げた*]

あらあら、随分と賑やかになっているのね。
…別に人見知りなんてなってないわよ。
……ゲルハルト、何処行ったのかしら…。

[不安そうに辺りを見回している]

失礼しました。
少し時計の調整の為に村の外まで出ておりましたが…矢張り此処に来ると狂ってしまう。

……時が狂うと言うのは、厄介なものですね。

黒衣の子供。
どちらも、誰かへの願いに現れるのですね。

……ローズマリー様のお話を御聞きしましたが、酷い苦痛を伴うように感じられます。どうにかすれば、アーデルハイド様は救われる道もあったのでしょうか…。

マスターアナ、失礼しました。
御傍に居ります。

……申し上げます、マスターアナ。
それは人見知りだと思うのです。

[指貫の革手袋をはめた手の甲を見やる。
そこには丸い縁取りの中に幾重にも薄い歯車が重なっており、文字盤も針も目を凝らさねば動きが分からぬ程の小さな時計が付いていた]


なんじゃ、もうこんな時間かい。


[コンと時計を叩けば、ポゥと空中に時間だけが浮かび上がる]

昨日も同じ客の護衛をしていたが、はて…？

[首を傾げ、再度時計を叩けば、その光は消えた]

こんばんわじゃ。

村長がここに集まれと言っとったので来てみたのだが、何かあるのか？

あら、また新しい人が…うぅん、最近見知らぬ人が多いわね。
腕の立ちそうな方ですし、ちょっと怖いわ…。

って、ゲルハルト、もう何処に行ってたの！
私が人見知りなんてする訳ないじゃない。いつも仕事で大勢の人と商談をしているというのに。
……本当よ、別に怖くなんか無いんだから。
[と言いながら、ゲルハルトの背中にしがみつく]

おや、今晩は。よい夜ですね、傭兵様。
村長が言うに、時間泥棒の容疑者を集めた、と仰っておりました。

マスターアナ、申し訳在りません。
少々時計が狂って居りました為、調整しておりました。
…はい、判っておりますよ。

[アナの手を慰めるように撫でた]

容疑者ね…あまり嬉しい話ではないけれど。

…黒衣の子供？
う、だからそういう話は夢に出……うぅん、興味が無いからやめてと言ったでしょうにっ。もうっ

[顔を覗かせたアナとも見比べて]

時間泥棒の容疑者？
容疑者ってどんな基準なんじゃか…。

しかしお前さんは確かどこかの主の機械人形と記憶しておったが、その小さいお嬢ちゃんの、なのかね？

よし。ちび共寝たから晩酌晩酌。

[アナの頭をなでつつ]
大丈夫ですよ、マスターアナ。彼らは害を無しては居りませんでした。ただ、人の情に付けこんだ所業をしているだけですから。
確りとしていらっしゃれば、来ることはありませんよ。

[ラドルフの声にアナを見て居た顔を上げ、心なしか嬉しそうに]
はい、現在はマスターアナ…彼女の御屋敷で、当主アナ様に御仕えして居ります。…次期当主、では有りますが。

現在の当主様は名ばかりで御座いまして、病床に。ですから、アナ様が御当主の代わりをしておられます。
私は当主様を代々のマスターと認識し、御仕えしておりますので、現在の実質の当主であるアナ様をマスターとし、御傍に控えております。

[ゲルハルトに撫でられつつ]
もう、そんな事を言うとまた寝所の番をお願いする事になるわよ？
い、いい加減私がそういう話が苦手…コホン、好きではないと覚えて欲しいものだわ。

うぅん、傭兵さんは腕が立ちそうだけど、やっぱりこれだけ大きな人となるとちょっと怖いわね。
[ゲルハルトの背中に隠れたまま、そっとラドルフの姿を見上げている]

なるほどのぅ。
重圧のありそうな立場じゃけど、おぬしが居るなら大丈夫そうじゃのー。

[２人のやりとりを見て目尻を下げる]

おや、イゾルデ様も今晩は。
[テーブルに灰皿を並べつつ]

申し上げます、マスターアナ。
最近、毎日朝まで居りますから、構いません。…マスターアナは、確かに怖いお話は苦手のようですね。

ラドルフ様は、たしかに背も高くがっしりとしていらっしゃいますが…頼れるお方かと。

[ラドルフに向き直り]
申し訳在りません、私の主であるアナ様は、少々人見知りの気が御座いますから…御無礼をお許し下さい。
[深々とお辞儀をした]

おい、傭兵と騎士。お前らも飲め。

(　ﾟДﾟ)ｙ−~~

ゲ、ゲルハルトが頼れると言うならばそうなのかしら…。
うぅん、でもやっぱりこれだけ大きい方だとどうも…。
[遙か頭上に、不安げな視線を投げかけている]

うぅぅ、失礼な事を言ってしまってごめんなさい…。

ちびにはHakushuはまだ早いな。こっちにしとけ。

そうじゃのう。小動物は好きなのだが、なつかれる事は少ないのぅ…のぅ。

ゲルハルトとアナ嬢じゃな。
しばらくここにいる事になりそうだからよろしくの。
力仕事でもあれば何かと手伝えるだろうじゃて。

[ボトルを見て]
…申し訳在りません、イゾルデ様。私は食物及び飲料を摂取するように出来ておりません。お心遣い、感謝致します。

[簡単なつまみをテーブルに並べつつ]

おや、マスターアナ、そろそろ御疲れの様ですね。
…皆様、失礼ながらマスターアナの寝所番を承りました為、私も此れで失礼致します。

ん、羊と家政婦がいたと思うが…どっか行っちまったか。

ん、じゃあ油でも差せ。

Ｈａｋｕｓｈｕとは何ぞ、と思うたがありがたく。

知らん。旦那が好きで常備してる酒だ。森の香りがするぞ。

うちのミシンは爺さんの代から使ってる上等の足踏み、鋏と時計に並ぶ我がテーラーの自慢のブツだ。

ほぅ、ほのかな甘みのある酒だの。
スモーキーな風味じゃ。

[テーブルの上のつまみもヒョイぱく]

そうか、ぬしは仕立て屋か。
そう言われればホルダに鋏をさしておるものな。

…飲みやすいな、この酒は。旨い。

ウィーッス。
ちょこちょこ増えてるんだなー。


[ゼルマ婆さんの話を聞き]

未来の変わらない同じ時間を繰り返す、ねぇ…。
ぞっとすんな。

頭痛てー…
飲みすぎだな、うん。

今日はちび共にパンケーキを焼いてやるんだぜ。
娘がちーずちーずうるさいがチーズはパンケーキに乗せるもんではないと思う。

ん、ブルー乗せて蜂蜜かけるのは有りか…

村長に呼び出されたのは16人と伺っていますが、まだ揃っていないようですね。

よっこらしょ。ルルや、おいで。そろそろ会議が始まるのかしら？

時間泥棒には、もう遭わずに済むと思って居たのにねぇ。

もう少しで始まるのかな…？

うーん……今は誰も居ないっぽいし、また後で顔を出すよー。

[…はお菓子を食べながら、家に帰って行った**]

やぁやぁよっこいしょ。不思議な時計がある村はここかな。

こんばんは!

不思議な時計かぁ…集まれって言われたけれどまだ始まらないのかな?

よぉ。二人ともお疲れさん。
ここに入れるってこたぁ、時計を持ってるってことだよな。

[言いながら、羊が彫られた懐中時計を見せる。]

村長から聞いてなかったっけか？確か１０日の早朝から時間泥棒探しが始まるって話らしいぜ。
…まあ、村長も忙しいらしいし伝え忘れたのかもしれんが。

…まあパンケーキにチーズはねえな。うん。
しかしなんだ、昨日はおれがちびすけ探ししてる間酒盛りしてやがったのか。羨ましいなおい。

[集会場に置かれた空の酒瓶を見てため息。]

こんにちは!羊飼いさん!
時計…?これのことかしら?

[金細工の腕時計を見せる]

旅芸人だから時間にはきちんとしなければならないのだけれど、邪魔になってもいけないからこの形なの。

あら、時間泥棒探しは10日だったのね…うっかり聞き逃してたわ!ご親切にありがとう、羊飼いさん!

…何時から始まるかとずっと思ってたんですが…
始まる日付決まってたんですか。
前もって聞いとくのって大事ですね、ホントに。
うん。
………何して待とう。

集会場の出入りは基本自由だが、それを紛失したら入れなくなるから注意しておいた方がいいぞ。
時間泥棒の中にはおれ達の時計をコレクションしてる奴もいるらしくてな。時計を失くしたら他にも影響があるって聞いたが…なんだったかな。

[左手を差し出す。握手を求めているようだ。]

アルベリヒだ。よろしく。足元の羊はキルシュという。

[めええ、と足元の羊が鳴く。]

人形を作りながら待つってのはどうだ？
集会場の中は時間のループがないらしい。…今のところは、だが。

集会場で保管されている時計の影響かもな。ここだけ時間が停滞してないのは。

…ちびすけも見つかったら集会場の中に入れておくかね。
いやそもそも見つからないからどうしようもないんだが…うーん…。

親切にご忠告ありがとうございます!
わわわ…コレクション、ですか…怖いですね…
この時計だけは思い入れのあるものなので…
絶対に時間泥棒、とっちめてやりましょうね!

[左手を握って握手する]

アルベリヒさんと、キルシュさん、ね覚えたわ!
私はツィンカと呼んで!
どうぞよろしくね

ま、村長から聞いた話だけどな。実際に時間泥棒と遭ったことがあるのは今のところゼルマばあさんくらいか。
詳しい話はゼルマばあさんに聞いてみるといいぜ。
猫を連れてるからすぐわかる。

[握手の後、左手で時計の螺子を巻きながら]

時間のループもそうだが、各々思い入れのある時計が盗まれるってのも嫌なもんだ。
おれのも親父から貰った大事な時計だからな。盗まれるわけにゃいかねえし。

この村の村長さんも大変なんですね…
ゼルマさん、ですか…
もしいらっしゃったらぜひお話を聞きたいです

アルベリヒさんのその時計も大切なものなんですね…
時間も時計も奪っていく時間泥棒…一体何を考えているんでしょう?

さあな。
それこそとっ捕まえて聞き出してみるしかねえだろうとも思うぜ。
聞かせてくれるかは知らんが。

ちびすけ…ってかアラザンは一体何処で迷子になってんだろうなあ。なあツィンカ、キルシュよりもちっこい羊何処かで見なかったか？

…アタシの時計は、そんなに思い入れある品じゃないけど…
ここに入れなくなるのは困りますねー。
ここで作ってる限り戻らないんなら、
良い機会だからいろいろ作ってみようと思うし。
・・・失敗したら、外に出しとけば部品に戻るかな？

[...はそんな事を呟きながら工具箱を開けた。
工具に混じって、ネジや人形の部品が入っている。
…最も、練習用なのかあまり見栄えが良い物は無いが。]

…いやあ、出しておいたら元に戻るかは保証しないぜ？
おれもそこまで集会場のことを知ってるわけじゃねえしさ。

[ドロテアの工具箱を見ながらひゅう、と口笛を吹く。]

で、人形ってぜんまいで動くようなやつか？

はい。
一応時計職人目指してるんですが…
まだまだ見習いだし、せめて人形で練習しようと思いまして。

…と言うか、羊の名前がケーキ関連の物にしか思えないのは気のせいですか？

…名付けたのおれじゃねえもん。

[ぷいっとそっぽ向いた。]

子羊が生まれるたびに、親父が飲み食いしてたもんの名前付けるからこうなるんだ。

ったた、おはよう…。

[空き瓶を抱きかかえたままごろりと転がって頭を打ったらしい]

キルシュさんより小さな羊…?
すみません、見かけていないですね
どこかに行ってしまったんでしょうか…?

あら傭兵さんおはようございます

これは綺麗なお嬢さんじゃの。
羊も可愛いのぅ

[もふ]

…うわあ。酔っ払いだ。
水飲め水。

[鍋になみなみ水を注いで来た。]

ちょ、そんな乱暴にもふもふするなよ。

[キルシュは　じたばたしている！]

もふもふ（うっとり

[キルシュのじたばた気づかぬ]

…キルシュが嫌がってるからちょいと失礼。

[ラドルフの手から　キルシュを取り戻した！]

水飲んで頭冷やしてくれよ。頼むからさ。

水は嬉しいのじゃが、鍋の量ほど飲んだら飲みすぎてぽんぽんぺいんしてしまいそうじゃの。

[ごくごく]

手鍋位の量なら飲めそうに見えたが。
あと、キルシュの毛は今度刈るんだ。だからあまりもふられると商品価値が。

まあ嫌がってるからってのもあったが。キルシュは酒臭いの嫌いだからなあ…。

…とにかく。飲み過ぎはよくない。

[よしよし、と抱え込んだキルシュを撫でつつ。]

けぷ。
むん、すまんな。

[酒のにおいを散らそうと服もぱたぱた]

なんじゃー、刈ってしまうのか
そういえば最近毛刈りを６年間逃げ続けて有名になった羊が死んでしまったようじゃのぅ。
毛量２７ｋｇもあったとか。

…。
毛を刈るのは大事らしいな。羊のためにも。

[心なしかキルシュは震えているように見える。
気のせいかもしれないが。]

なんやの時計もっとらんと入れへんて。知らんかって俺、昨日この辺うろうろしたやん。
もう忘れんよう、こう、括っとこ。

[ベルトに紐で目覚ましがぶら下がっている。あまり座りはよくなさそう]

……ちょい歩きにくいな。

なかなかシュールないでたちじゃのぅ、おぬし。
腰紐に目覚まし時計じゃと。

よう。
なんだ、集会場をうろうろしてたのは時計を忘れたからだったのか。
…村長もきちんと説明してなかったんだな。

まあ、ポケットに入れるよりはマシじゃないか？
多分。

もう結構集まっとるな。時間泥棒探しっていつもの避難訓練とちゃうの？

傭兵のおっちゃん、そう言わんで。括っとかんとすぐ持ってくんの忘れそうなんやもん。

いや…どうも本当に出たらしいぞ。
ドロテアは作った人形が起きたらまたバラバラになってたとかなくした部品が勝手に出てきたとか言ってたしな。

ポケットや括りつける以外で肌身離さずとなると…頭に乗せるとか？
冗談だ。忘れてくれ。