ほんとだよ、見たんだ。　奇妙な黒い影が目の前を横切っていくの。
信じてよ。

[少女が湖面をてくてく歩いている。]

むー。なんですか、この熱気は。
おさかなたちが慌てるわけですね…

うあー…砂が焼けて岸にあがれないです…
これは火の連中かーなーり調子づいてますね…
さくっと追い出さないと水辺の生き物たちに大ダメージです

あっちー。

太陽が毎日高くて貝の家も焼けるようだぜ。
たく、たまんねぇな。

一体どうなってんだ？

ふぅ、夜はだいぶ過ごしやすいんだが……湖もだいぶ水面が下がってきてるし。
川なんて筋のようなくらいしかないし。
困ったもんだ。

雨……降らねぇかな。

お……雨降るのか？

ん、気休め程度だったな。
だけどこれでしばらくは持ちそうだ。
沢蟹のやつも喜んでるっぽいぜ。

ん？
何だぁ、月が赤くてやたら大きい。

な、なにぃ！

月が見る間に欠けて行ってる。
赤黒い色に染まってどんどん細くなっていってるぞ。
火の奴らの仕業か！！！

真っ暗だ……なんて恐ろしい……。