ねぇ、知ってる？　あの噂。　あの事件って本当はね……。

[ポケットから銀鎖付の懐中時計を取り出して眺めている。アラビア数字で時刻が描かれており、ムーンフェーズが付いている。それによれば今日の月齢は１９夜らしい]

集まって欲しいとのことだったが、いったい何事であろうか。

おはようございます。
お食事をご用意しております。

……72秒遅れ？
大変申し訳ございません。
どうかごゆるりと、おくつろぎになってください。

それでは、失礼いたします。

……おかしいですね？
時計は合わせたはずですのに。

[カラコロと大きな鞄を引いた神父が戸をくぐった。誰かの姿を見れば挨拶するだろう]

えぇと、ここでいいのかな…？
あ、こんにちわー。

[会釈にあわせて、大振りの十字架が胸元で揺れる。
　蔦模様の透かしが入った銀細工で、蔦が絡むように真ん中に時計がはめ込まれていた]

[机の上にあった手紙と自分宛に来た手紙を交互に見比べ、
　なにやら納得したように頷く]

毎日同じ人が同じ告解をしに来ていたのは泥棒さんのせいだったんですねぇ。あの人、ボケたのかと心配した僕の慈悲はどうしてくれるのでしょう…。

[ぐるりと広間を見渡して]
まだ他にも村長さんに呼ばれている人もいるのかな？

お夕食がご用意できました。

……

22分ですって？
一体どうしたんでしょうか。

遅れちゃったかな？
あれ、まだみんな集まってないみたいだね。
よかったよかった。

あ、時計？
これこれ、ここにあるよほら。機械式の懐中時計さ。蓋を開けると文字盤以外が透明でね、精巧な作りが見えてなんとも綺麗なのさ。
父さんの形見でね、大事にしてるんだよ。

[一礼して]

いらっしゃいませ。
カローラ様ですね？
お待ちしておりました。

私はドロテアと申します。
お集まりいただいた皆様の身の回りの御世話をさせていただいております。
何かございましたら、お気軽にお申しつけくださいませ。

なお、御食事は毎日決まった時刻にあらかじめ御用意させていただきます。
どうぞ御自由なお時間に食堂にお越しください。

それでは恐れ入りますが、私は雑務がございますので、ここで失礼いたします。

ごゆっくり、おくつろぎくださいますよう。

……いっつー

あれ？　誰か来たのでしょうか。
[顔を上げて首を傾げ]

[落としていた本を拾い、鞄へ詰めこむと困ったように呟く]

夜は教会に戻ってもいいのでしょうか。また今日もあの痴呆…じゃなくて時間を奪われた人が告解しにきそうなのだけど……無理かなぁ
いちいち付き合う僕も僕で偉いけど。

……ん？　何かいい匂いがする。

[...は匂いにつられて鞄をカラカラと引きながら廊下へ出て行った。
　道中、カローラに会えば営業スマイルで丁寧に自己紹介くらいはしただろう*]